2018年02月03日

諏訪湖の冬の風物詩「御神渡り」[諏訪市 / 岡谷市 / 下諏訪町]


昨日の県内ニュースにて、5年ぶりに諏訪湖で「御神渡り」が出現したとの報道があり、翌日が土曜日だったこともあって、早速見に行ってきました。
 
長野県内に引っ越してきてからというもの、毎年冬になると必ず耳にする「御神渡り」という言葉。ここ数年の間は見れなかった様ですが、過去に出現した際の御神渡りの映像を見て、いつかこの目で見てみたいと思っておりました。
 
あの大きな諏訪湖が全面結氷した際に現れる自然現象なので、そのスケールの大きさと迫力に感動しました。

全面結氷した諏訪湖 (長野県)

ただ、"全面結氷"と言っても川が流れ込んでいる箇所まではそうそう凍らない為、諏訪湖の湖面全てが凍っているイメージで行くと、凍っていない部分が割とあることに「あれ??」となります。
 
どこまでをもって"全面"としているのかはっきり分かりませんが、こういった河川などの流入部以外の湖面がおおよそ凍ると"全面結氷"としているのかな、と思いました。

5年ぶりに出現した諏訪湖の「御神渡り」

「御神渡り」についてですが、読み方は"おみわたり"と読み、湖面全体を覆った氷の一部が筋状に割れてせり上がる自然現象で、その全長は数kmという規模に及びます。
 
『すはの海の  氷の上の  かよひぢは  神のわたりて  とくるなりけり』
 
これは、平安時代の文献・堀川院御時百首和歌の中で源顕仲が詠んだ和歌。
 
この頃には既に諏訪湖氷上に現れるこの現象は広く認知されており、「諏訪大社上社の男神・建御名方神 (タケミナカタノカミ) が、下社の女神・八坂刀売神 (ヤサカトメノカミ) に会いに行く"神幸"の跡」として信仰され、「春先に明神が通って行けば解ける」と伝えられてきました。
 
また、ちょっとロマンに欠けてしまいますが、この現象を学術的には「氷の鞍状隆起現象」と言い、長野県の諏訪湖と北海道の屈斜路湖で見られることで知られる"冬の風物詩"です。

ずーっと向こうまで続いている諏訪湖の「御神渡り」

御神渡り出現のメカニズムとして、まずは湖の湖面全体が凍るほどの寒い日が続く必要があります。
 
過去、御神渡りが出現した年の記録を見ると、多くが1月下旬から2月上旬までの間に出現しており、その時期の諏訪湖周辺の最低気温は-10℃を下まわることが珍しくありません。
 
諏訪湖の場合は、時期が来ると湖面の凍結状況が度々県内ニュースなどで取り上げられ、全面結氷したとなれば「今年は御神渡り出現なるか」と出現を期待する声が高まり、連日の様に諏訪湖の様子が報道されることがあります。
 
今年は5年ぶりに御神渡りが出現したわけですが、近年では結氷が進まなかったり、全面結氷しても条件が整わず御神渡りが出現しなかったという年は珍しくなく、年号が平成になってから30年経ちますが、この30年間で御神渡りが出現したのは今年を含めてたったの"9回"です。
 
御神渡りが出現しなかった様子は「明きの海」または「明けの海」と呼ばれ、昔からその年の農作物は不作になると言い伝えられてきました。

御神渡りの遥か向こうには八ヶ岳の稜線が見える (中央奥)

全面結氷の後、さらに気温が下がり続けると氷は収縮をしていく為、全面結氷した氷の一部に裂け目が出来るようになります。
 
この裂け目から顔を出した湖水がまた凍ると、僅かに出来たスペースに更に氷が詰まった状態になる為、見た目には分かりませんが、氷の中はもうギュウギュウのパンパン。
 
そして、ひとたび気温が上がり始めると収縮していた氷は緩んで膨張していきます。
この時、既に行き場の無くなっている氷内部ではもの凄い圧力が生まれている事でしょう。
 
この逃げ場のない力は外に出れそうな弱い部分に集中し、そこから外へ飛び出そうとします。
この"弱い部分"というのが、氷が収縮した際に出来た裂け目部分です。
 
この部分の氷は後から出来たものなので、どうしても周囲の氷に比べて密度が低く、圧力が集中しやすいです。
 
やがて圧力に負けて砕けると、ここから氷が衝突し合う形になり、凄まじい自然の力によって小さな亀裂はみるみる筋状に広がっていき、力の均衡が崩れた箇所で氷のせり上がりが見られるようになります。
 
これが「御神渡り」であり、ちょうど大陸と大陸がぶつかりあって生まれる"山脈"と同じようなメカニズムですね。

冬は渡り鳥の憩いの場でもあり、一年を通して野鳥の宝庫でもある諏訪湖。何時間でも見ていられます。

余談になりますが、長野県には全面結氷する湖や池がいくつもありますが、「御神渡り」を聞くのは諏訪湖だけです。日本全国で見ても、調べた限り、諏訪湖と屈斜路湖だけ。
 
あの規模の諏訪湖でさえ「御神渡り」といっても数十cm程度の氷のせり上がりですので、諏訪湖よりも小さな湖や池では、きっと氷の圧力が御神渡りを生むほどのものではないということなのかな、と思いました。
 
また、諏訪湖は日本で24番目の大きさの湖です。諏訪湖よりも大きな湖はいくつもあるわけですが、暖かい地域の湖はもちろん全面結氷しませんし、北海道であっても海と繋がっているような塩分濃度の高い湖はそうそう全面結氷には至りません。
 
猪苗代湖や十和田湖といった東北地方の淡水湖でも、水深が深いとこれもなかなか全面結氷とまではいかないようです。諏訪湖の最大水深は約7m。猪苗代湖の最大水深は約95mあり、十和田湖に至っては最大水深が約330mもあります。
 
屈斜路湖も最大水深が約120mもあるのですが、ここは全面結氷と御神渡りが見れるんですよね。
ただただ単純に猪苗代湖や十和田湖の辺りよりもずーっと寒い、ということなんでしょうか?
 
専門家ではないので詳細は分かりませんが、これがあちこちの湖や池で見れる現象だったら昔の人も「御神渡り」なんて呼び方はしなかったのではないでしょうか。
 
地域柄、あまりにも身近な現象過ぎて麻痺している部分があるのでしょうが、様々な条件が重なって初めて見られる本当に神秘的な自然現象なんだと、あらためて実感しました。

  ※ 諏訪湖氷上には絶対に立ち入らないで下さい!! ※
 
諏訪湖には、随所に「釜穴」と呼ばれる湖底から湧出した温泉や天然ガスにより、部分的に氷が薄くなっている箇所が点在する為、人が立ち入る行為は非常に危険です。
 
また、岸に近い部分でも風向きや気温の変化によって、氷の厚さや丈夫さも絶えず変化しており、目で見ただけではその危険性を判断出来るものではありません。(実際に私の目の前で氷に乗った人は、足元の氷がバリンッと割れ、ズボンを濡らしておりました💦)
 
地元の警察・消防・組合などによって構成された諏訪地区観光客安全対策推進会議により、「諏訪湖氷上には絶対に立ち入らないように!」との呼び掛けや、注意喚起の看板設置が行われています。
 
乗っている人がいるから大丈夫だろうと思っても、もう一人が乗った瞬間に割れてしまう可能性も十分に考えられます。
 
非常に危険ですので、湖畔の安全な場所から眺める様にしましょう🍀

< 画像 Gallery >

全面結氷した諏訪湖 (長野県) | 暮らしのほとり舎

全面結氷した諏訪湖 (長野県)

5年ぶりに出現した諏訪湖の「御神渡り」 | 暮らしのほとり舎

5年ぶりに出現した諏訪湖の「御神渡り」

諏訪湖の御神渡り (1) | 暮らしのほとり舎

諏訪湖の御神渡り (1)

ずーっと向こうまで続いている諏訪湖の「御神渡り」| 暮らしのほとり舎

ずーっと向こうまで続いている諏訪湖の「御神渡り」

諏訪湖の御神渡り (2) | 暮らしのほとり舎

諏訪湖の御神渡り (2)

御神渡りの遥か向こうには八ヶ岳の稜線が | 暮らしのほとり舎

御神渡りの遥か向こうには八ヶ岳の稜線が

コハクチョウの群れ (諏訪湖) | 暮らしのほとり舎

コハクチョウの群れ (諏訪湖)

コハクチョウの幼鳥 (諏訪湖) | 暮らしのほとり舎 暮らしのほとり舎

灰色の羽毛が目立つコハクチョウの幼鳥 (諏訪湖)

ハクセキレイ (諏訪湖) | 暮らしのほとり舎

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